フルサイズはAPS-Cよりボケやすい……。よく聞く定説ですが、本当なのでしょうか。そしてどの程度違うのでしょうか。
定性的な話
定性的な話であれば、studio9さんの下記記事を読むと良いでしょう。作例もありますし分かりやすいです。
ざっくり言うと、「同じ被写体を同じレンズと設定で同じ距離から撮るなら一緒だけど、画角を同じにして撮るとフルサイズの方がボケやすいよ」ってことですね。*1
photo-studio9.com
定量的な話
定性的な話では満足できないカメラオタクのみなさん、こんにちは。
ここからは数式を使って、少し真面目に考えていくことにしましょう。
APS-Cのカメラを使ってフルサイズと同じ大きさでフレーミングするには、大きく分けて2通りの方法があります。
- 被写体との距離は変えず、レンズの焦点距離を変える
- レンズの焦点距離は変えず、被写体との距離を変える
まずは前者について見ていきましょう。
レンズの焦点距離を変える場合
被写体との距離を変えず、レンズの焦点距離を変えることで画角を一緒にする場合は割と簡単です。有効口径という便利な指標があります。
有効口径が大きいほど、一般にボケが大きくなります。小さいレンズより、大きいレンズの方がなんとなくボケやすそうですよね。それを表したのが有効口径です。
有効口径とボケ
有効口径の定義式は以下となります。
: 有効口径 [mm]
: 焦点距離 [mm]
: F値
例えば、
- 焦点距離17-50mm、F2.8のレンズの望遠端: 50mm÷2.8=17.9mm
- 焦点距離50mm、F1.8のレンズ: 50mm÷1.8=27.8mm
- 焦点距離85mm、F1.8のレンズ: 85mm÷1.8=47.2mm
このように、焦点距離が同じならF値の小さいレンズの方が、F値が同じならより焦点距離の長いレンズの方が、それぞれボケやすくなります。
また、有効口径とボケの大きさは比例するという特徴がある(詳細は後編にて)ため、85mm F1.8のレンズは50mm F1.8のレンズに比べて1.7倍ボケが大きい、ということができます。
フルサイズ vs APS-C
では、フルサイズとAPS-Cのボケを有効口径を使って比較してみましょう。
フルサイズは50mm F1.8のレンズを使うことにしましょうか。このレンズの有効口径は上述の通り27.8mmです。
APS-Cで換算50mmにしようとすると、50mm÷1.6=31mm*2のレンズを使うことになります。
31mm F1.8のレンズの有効口径はというと、31÷1.8=17.2mm。50mm F1.8のレンズと比較すると、焦点距離比と同じ1.6倍だけ変わってきます。これがフルサイズとAPS-Cのボケの大きさの違いです。
APS-Cでフルサイズの50mm F1.8と同じだけのボケを得ようとすると、F1.1のレンズを使えば31÷1.1=28.2mmで、だいたい同じくらいのボケになりますね。段数でいえば、で概ね1.3段分くらいです。
APS-C専用のSIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Artなんてレンズがありますが、F1.4の明るさをもってしても、単純なボケの大きさではフルサイズに付けた撒き餌レンズに勝てないのですね。もちろん描写性能や口径食なんかは違うでしょうから、一概にどちらが良いとは言えませんが。
SIGMA 単焦点レンズ Art 30mm F1.4 DC HSM キヤノン用 APS-C専用 301545
- 出版社/メーカー: シグマ
- メディア: Camera
- この商品を含むブログ (2件) を見る
今回のまとめ
長くなりそうなので今回はここまで。今回の内容としては、
- 有効口径はボケやすさの目安
- キヤノンの場合、APS-Cとフルサイズのボケの大きさは1.6倍(1.3段分くらい)違う(同じ画角になるようレンズを交換した場合)
それでは、レンズを変えずに被写体との距離を取った場合はどうなるのでしょうか。その結果は後編にて。
www.terry-u16.net